増加する高齢者の認知症と相続対策(後見人と信託)その3

前回の私のコラムでは、法定後見人の役割についてみてきました。

では、法定後見人はどのように選任されるのでしょうか。

法定後見人制度は民法に基づいていますが、実際の運用は家事事件手続法その他の法令によって行われます。

まず、本人が判断能力を欠く状態になったなら、申立て権者により家庭裁判所に後見開始の審判請求ができます。
申立て権者は本人、配偶者、4親等以内の親族のほか市町村長もなることができます。申立てを受けて、裁判所は調査の上、後見開始の審判を行います。後見開始の審判により後見人を付すとされた者を成年被後見人、本人に変わって法律行為をなすものを成年後見人といいます。家庭裁判所は職権で成年後見人を選任します。成年後見人は複数人選任されることもあるし、法人が選任されることもあります。

過去5年間の成年後見の申立件数は次のとおりです。(出典:最高裁判所「成年後見事件の概況」)

平成29年の成年後見等(保佐、補助、任意後見監督人選任を含む)の申立者と本人との関係による数は次のとおりです。(出典:最高裁判所「成年後見事件の概況」)

それでは裁判所は法定後見人をどのように決めるのでしょうか。

成年後見申立書には成年後見人候補者を記載する欄がありますので、申立人が候補者を指定することができます。しかし、この候補者が常に選任されるとは限りません

本人の身上監護、財産管理を適正に行ってくれる人を家庭裁判所が選びます。本人の親族がなる場合もあれば、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門家を選ぶ場合もあり、申立人が希望する人が選任されるとは限りません。また、成年後見人等が行う後見等事務を監督するため,専門家を監督人に選ぶ場合もあります。

成年後見人等や監督人は,家庭裁判所の審判により、本人の財産から報酬を受け取ることができます。また,預貯金等の財産の内容によっては、後見制度支援信託の利用を検討していただくこともあります。

なお,誰を成年後見人等に選任するかについては,家庭裁判所が職権で判断する事項であり,これについて不服申立ての規定はありません

平成29年の成年後見等の成年後見人と本人との関係による数は次のとおりです。(出典:最高裁判所「成年後見事件の概況」)

本人がまだ元気なうちに後見制度を考えている方の中には、後見人を自ら選んでおきたいと思う方もいらっしゃると思います。
この場合に後見人を予約しておく制度が任意後見制度です。次回は任意後見制度を見ていきます。

ひまわり税理士法人
平野 裕二

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