中小企業社長の世代交代のための事業承継税制 その4(非上場株式の贈与税の納税猶予)

前回までは、事業承継税制の概要、平成30年税制改正の特例措置による要件緩和と前提手続きについて書きました。この特例措置を適用するためには、平成35年3月31日まで都道府県知事に特例承継計画書の提出、確認が必要となります。特例措置による「非上場株式の贈与税の納税猶予」とは、後継者が、先代経営者から全部又は一定数以上の非上場株式を贈与により取得し、その会社を経営していく場合には、翌年3月15日までに贈与税申告することにより、その後継者が納付すべき贈与税のうちその株式に対応する贈与税の全額の納税が猶予されます。今回は、申告後の手続きについて書きます。

非上場株式の贈与税の納税猶予制度による納税猶予額の猶予を継続するには、申告後も引き続き、この制度の適用を受けた非上場株式等を保有すること等の要件があります。納税猶予額の猶予中に下記の「納税猶予の打ち切り要件」に該当した場合は、納税猶予は打ち切られ、納税が確定し、納税猶予額の全部又は一部を利子税と合わせて納付することとなります。また、納税猶予額の猶予中に下記の「納税猶予の免除の要件」に該当した場合は、納税猶予額の全部又は一部の免除が確定します。

 納税猶予の打ち切り要件

  1.  この制度の適用を受けた非上場株式等について、譲渡等(この制度の適用を受けている非上場株式等が後継者に贈与され、その後継者が非上場株式等の贈与税の納税猶予の適用を受ける場合における贈与(以下「免除対象贈与」という)を除く)を行った場合
  2.  後継者が、会社の代表権を有しなくなった場合
  3.  会社が、資産管理会社に該当した場合(一定の場合を除く。)
  4.  経営贈与承継期間(原則として申告期限後5年間。以下同じ。)内の雇用の平均が、贈与時の雇用の8割を維持できなかった場合(一定の手続きで納税猶予を継続できる。)

 納税猶予の免除の要件

  1.  先代経営者等が、死亡した場合
  2.  後継者が、死亡した場合
  3.  経営贈与承継期間内に後継者が、やむを得ない理由により会社の代表権を有しなくなった日以後に免除対象贈与を行った場合
  4.  経営贈与承継期間の経過後に免除対象贈与を行った場合
  5.  経営贈与承継期間の経過後に会社について破産手続開始決定などがあった場合
  6.  経営贈与承継期間の経過後に事業の継続が困難な一定の事由が生じた場合において、会社について譲渡・解散した場合

納税猶予額の猶予を継続する手続きとして、経営贈与承継期間内は毎年、経営贈与承継期間経過後は3年ごとに、継続届出書に一定の書類を添付して所轄税務署へ提出する必要があります。この継続届出書は、納税猶予の打ち切り又は納税猶予の免除まで継続して提出する必要があります。

 非上場株式の贈与税の納税猶予の制度は、継続して、後継者が経営権を有しながら、会社の経営を行っていること等を条件に、贈与税の納税が猶予されます。この条件を満たさないこととなった場合には、贈与税の納税猶予は終了します。この条件を満たさなくなった場合には、満たさなくなった理由により、納税猶予額を納税する又は免除となります。贈与税の申告時点では、まだ納税が免除されているのではなく、納税が猶予されているだけです。

ひまわり税理士法人
池田 和彦

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