ひまわり税理士法人の池田和彦です。
前回までの私のコラムでは、事業承継税制の概要、平成30年税制改正の特例措置による要件緩和と前提手続きについて書きました。事業承継税制には、中小企業の株式を円滑に後継者へ引き継げるよう①「非上場株式の贈与税の納税猶予」と②「非上場株式の相続税の納税猶予」があります。平成30年税制改正で特例措置の創設により、この贈与税と相続税の納税猶予の適用について要件が緩和されました。この特例措置を適用するためには、平成35年3月31日まで都道府県知事に特例承継計画書の提出、確認が必要となります。今回は、特例措置による「非上場株式の贈与税の納税猶予」について書きます。
非上場株式の贈与税の納税猶予は、後継者である受贈者が、先代経営者である贈与者から全部又は一定数以上(贈与前から後継者が保有していたものを含めて、発行済株式総数の3分の2に達するまでの部分)の非上場株式を贈与により取得し、その会社を経営していく場合に、その後継者が納付すべき贈与税のうちその株式に対応する贈与税の全額の納税が猶予されます。
この制度の適用要件は、次の通りです。
(1)会社の要件
以下のいずれの会社に該当しないこと
- 上場会社
- 中小企業者に該当しない会社
- 風俗営業会社
- 資産管理会社(一定の要件をみたすものを除きます。)
(2)後継者の要件
後継者が贈与の時において、
- 会社の代表権を有していること
- 20歳以上であること
- 役員就任から3年以上経過していること
- 後継者及び後継者と同族関係者で総議決権数の50%超の議決権数を保有することとなること
- 後継者の有する議決権数が、同族関係者の中で最も多くの議決権数を保有することとなること
(後継者が2人又は3人の場合には、総議決権数の10%以上の議決権数を保有し、後継者と同族関係者(他の後継者を除きます。)の中で最も多くの議決権数を保有することとなること)
(3)先代経営者等の要件
先代経営者等が、
- 会社の代表権を有していたこと
- 贈与直前において、先代経営者及び同族関係者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと
- 贈与時において、会社の代表権を有していないこと
(4)担保提供
納税が猶予される贈与税額及び利子税の額に見合う担保を税務署に提供すること
この制度の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与税の申告をする必要があります。申告後も引き続きこの制度を適用した非上場株式等を保有すること等により、納税の猶予が継続されます。継続して納税猶予の適用を受けるには、継続届出書に一定の書類を添付して所轄税務署へ提出する必要があります。この継続届出書は、納税猶予の打ち切り又は納税猶予の免除まで継続して提出する必要があります。
次回の私のコラムは、納税猶予後について書いていきます。
ひまわり税理士法人
池田 和彦