増加する高齢者の認知症と相続対策(後見人と信託)その1

最近CM等で「家族信託」という言葉が聞かれます。この「家族信託」とは「民事信託」と言われる財産管理手法手続きのなかで、家族に財産の管理、処分を任せることを言います。(家族に適任者がいない場合、家族以外に財産の管理、処分を任せることもあります)

相続対策は本人が判断能力を欠く状況になった(例えば認知症になった)とき以降、本人の意思による相続対策(相続税対策を含む)はできなくなります。
今まで相続対策というと「遺言状」によって対応してきました。遺言状により遺産がスムーズに分割され相続されるようなスキームを考えてきたわけです。しかし、現実には遺言状では対応しきれない、より困難な問題がしばしば発生してきました。まず、認知症になってから遺言状は作成できません。認知症になると遺言状を作成する能力がないと判断されるからです。
もちろん認知症になると新たな契約ができませんので、相続税対策としての財産の構成要素の組換え等(不動産や有価証券の購入・売却、保険の加入、新たな借入または借入金の期限前返済)ができなくなります。

本人の判断能力が不十分になってきた場合、法定後見制度を利用することがあります。また、法定後見制度は本人の判断能力の程度に応じ「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれています。法定後見制度においては裁判所によって選ばれた成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)が、本人の利益を考えながら、本人の代理で法律行為をしたり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が成年後見人等の同意を得ないでした自分に不利益な法律行為を取り消すなどをして、本人の利益を守ります。
成年後見人等は登記されますが、登記事項証明書(または登記されていないことの証明書)を申請できるのは法定後見人等と本人及び本人の4親等の親族またはそれらの代理人等に限られますので、相手方が本人と契約しようとする場合、本人の判断能力に疑義を感じたとしても直接登記事項証明書を申請することはできません。

この法定後見人制度で相続対策または相続が発生する前にしておかなければならないことができるかどうか、他にもっと適切な方策があるかどうか、最近話題になっている任意後見と民事信託を含め次回以降のコラムで見ていきましょう。

ひまわり税理士法人
平野 裕二

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